政府債務を消せるという話はウソである。

リフレ派は、博士号もちの専門家でも平気でウソを言うようになっていて、非常に危険なのですが、リフレ派のウソの支柱になっているのがスティグリッツなので、こっちも相当な問題だと思います。
リフレ派推奨の記事がこちら。
news.livedoor.com
スティグリッツがこんな異常な発言をするようになっているとは驚きです。

金利は、雇用が伸びないままの景気回復を招くという懸念もある。企業が、資本集約型であるテクノロジーに投資する(ことで、労働分配率が下がる)からだ。より財政政策型のポリシーミックス(政策の組み合わせ)を取り入れるほうが健全だ。

・・・?
日本は延々とゼロ金利ですが、雇用が伸びているんですけど。
それはアメリカも同様。
スティグリッツが見ている現実は、どの現実なんでしょうか。

資本と労働をめぐる単純なモデルでは現代の経済に対応しきれない点も指摘したい。同じ資産家でも、米短期国債保有者と、株式を保有する富裕層では事情が違う。低金利下では国債利回りはゼロだが、株式投資のリターンは高くなる。利上げは格差解消に役立つ。

ふーん。
アメリカは利上げしていますから、格差解消するのでしょう。
日本も利上げして財政出動すればいいんでしょうけど、現状、それをやって失敗しているんですけどね。
日本は2016年9月から金利ターゲットを設定して財政出動したら、名目成長率がマイナスになってしまいました。

高野 : 次に金融政策ですが、日本では、出口すら見えない緩和策が続いています。米国では若干の利上げが始まりましたが、各国の金融政策に変更はありうるのでしょうか。

スティグリッツ : 景気回復がもっと力強いものだったら、利上げしやすかった。先ほども言ったが、政策しだいだ。財政政策に訴えていれば、金融政策にさほど頼らずに済む。

リフレ派とスティグリッツが永久に直視しようとしない現実として、日本は先進国中最大の財政出動をしています。
プライマリーバランスが先進国中最悪であるのはその意味。
で、その結果を見るべきなんですが、彼らは絶対に見ません。

スティグリッツ : まだ、(長期停滞論のような)仮説を受け入れる気にはなれない。というのも、たとえば、表向きには緊縮財政を口にしない米国でも、公共セクターの雇用が、08年当時より約50万人減っているのだ。ノーマルな成長がみられていれば、あと250万人多かったはずだ。これは、れっきとした緊縮財政政策である。緊縮財政政策を取っていなければ、経済はもっと力強く、金利も、よりノーマルなレベルだっただろう。

リフレ派は、「アメリカは財政出動している」と言いますが、スティグリッツによれば緊縮財政なのだそうです。
ただ、アメリカが景気回復しているのは厳然たる事実なんですけどね。

消費税の値上げは見送るべきだと(首相に)言った。消費税より(化石燃料の排出量に対する)炭素税の導入が必要だ、と。いいことでなく、悪いことに税金を課すのが、歳入を増やすためのベストな方法だ。また、企業や市町村は、(温室効果ガスの排出に高いツケが伴う)炭素税の導入に備えて設備投資を行うだろうから、成長が刺激される。

リフレ派はあらゆる増税に反対で、こども保険のような、たかだか3000億円程度の増税にも反対しているにも関わらず、スティグリッツの炭素税には賛成なんですよね。
理由は知りません。
どうせ整合的な説明はできないでしょう。

また、政府債務の期間構造も変えるべきだ。永久債の発行で金利上昇時の政府債務リスクが減り、景況感も高まる。また、日本銀行保有する国債の無効化も提案した。

伊藤 : 無効にすることなどできない。

スティグリッツ : いや、可能だ。できる。

伊藤 : 永久(に利息がつかない)ゼロクーポン債に組み替えるということか。

スティグリッツ : そのようなものだ。日銀保有国債の40%以上を日本政府が保有しているのだから、左ポケットに負債を抱え、右ポケットに債権を持っているようなものだ。

伊藤 : だが、政府と日銀のバランスシートを統合すると、日銀の負債(銀行券)が政府の負債になる。

スティグリッツ : 日本の政府債務残高は、対国内総生産GDP)比で230%だが、ほとんどが国内資金によって買い支えられている。公的部門に保有されている国債を差し引くと、実質的には140%程度だ。永久債に組み替えれば、十分対処可能な範囲である。これは、経済学の基礎理論にのっとった提言だ。

高野 : 理論上は素晴らしいが、実際には、かなり難しいのではないか。

このくだりが本題なんですけれども、「政府債務を消滅させることができる」というリフレ派のバカ話の元凶がスティグリッツにあったことが判明しました。
ノーベル賞受賞者だから何を言っていいということにはならず、日本国民を奈落に叩き落しかねない無責任な言説は非難されるべきでしょう。
上記のバカ話を読んで、スティグリッツが無条件に正しく、伊藤隆敏が無条件に間違っていると読んでしまうのがリフレ派とその支持層。
どうしてそうなるのかを全く説明できないにも関わらず。
博士号もちでもこんな調子であるのをみると、リフレ派はどこかおかしいのではないかと本当に思います。
上記の引用で伊藤隆敏氏が指摘していますが、統合政府で考えると政府債務の代わりに発行した貨幣が債務になるので、結局、債務は消えないという当たり前のことが、リフレ派にはわからず、スティグリッツは分かっている筈ですが、何らかの理由で奇妙な政策を推奨しています。
政府債務を永久債にするには、適正なマネタリーベースの規模が分からなければいけませんが、そんなものが分かるわけがないのです。
黒田日銀が2%のインフレ目標を達成するのに必要なマネタリーベースの増加は270兆で良いと当初は算定していたにも関わらず、実際にはそれをはるかに超えてもインフレ率がゼロのままである現実を鑑みると、永久債にしてもよい政府債務の額など算定できるはずがないのであります。
永久債を抱えると日銀は裁量でそれを処分できなくなってしまいますから、永久債の額を決めた内閣と国会もインフレ率に責任を持たなければならなくなります。
しかし、内閣や国会は金融政策の素人ですから、正しい決定をすることなどできるわけがないのです。
スティグリッツが推奨する政策を実行すると、財政政策も金融政策も内閣が決めることになりますが、それはベネズエラギリシャといった社会主義的国家で発生したのと同じ問題を招くでしょう。
そもそも、政府債務を何の負担もなく消すことができるなら、社会の運営に必要なカネはすべて政府債務で調達し、中央銀行に買わせて消せばよいのですから、税金を取る必要がなくなります。
スティグリッツが政府債務を消滅させる秘策を推奨しておきながら、日本政府が税金を徴収していることを批判しなかったり、炭素税を奨励しているのは非常に矛盾しています。