シムズ氏の貴重な教え(リフレ系は全然理解してない教え)

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FTPLについてリフレ系の人たちがほとんど言及しなくなりましたが、リフレ系の良いように利用できなかったので黙殺し始めたのだろうと思います。
いつものことです。
リフレ系は、彼らのポジション的利益のために無分別な経済政策を正当化しようとシムズ氏の権威を利用しようとしましたが、シムズ氏の残した教えは、きちんと読めば逆の示唆を含んでいます。
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  1. 政府債務はインフレで相殺される。インフレとはある種の税である
  2. 日銀が大きなバランスシートを抱え続けるのはよくない

インフレがある種の税だ、というのは標準的な経済学でも教えているので、特に珍しいものではないのですが、リフレ系はふだん、「政府債務は何の負担もなく消滅させることができる」と人々にウソをついているので、その辺にクギ刺す指摘なのです。
インフレで政府債務を相殺する、というのは、「インフレで負担する」という意味です。
インフレで物価が上昇するということは、商品を買う力が減る、ということです。
商品を買う力を2~3パーセント手放して、それによって政府債務を軽くするわけです。
具体的には、2~3%のインフレになると名目GDP(価格×生産量)が大きくなり、「名目GDP×税率=税額」の、税額が大きくなるので政府債務の返済がしやすくなるということであります。
2~3%のインフレの状態は、好景気であると期待できるので*1、インフレ率以上に私たちの所得が伸びるだろうという期待も持てるので、差し引きすれば、商品を買う力は増えるだろうという楽観的予測です。
例を挙げれば、好景気で給料が毎年4%伸び、そのうち2~3%はインフレで吸収され、結果的に商品を買う力は毎年1%増えるでしょう、という筋書き。
私は本来のリフレーション政策を支持しているのですが、敢えて書いておくと、人によってはマイルドインフレの世の中で損をすることはあります。
給料がどれくらい上がるかは、その人がどんな会社に勤めているかに左右されるので、もしその人の給料が毎年1%しか上がらないのであれば、その人は毎年、商品を買う力が下がっていきます。それによって政府債務を負担しているということになります。
いい加減なリフレ系の言うような、誰もが何の負担もせずに政府債務を消す方法などありはしないのです。
そんな方法があれば、世界中の国が無限に財政支出を増やすことでしょう。
そうなっていないことが、リフレ系のウソを端的に証明しています。
上記の「日銀が大きなバランスシートを抱え続けるのはよくない」という部分も、リフレ系の従来の主張を否定するものです。
リフレ系は、政府債務を日銀に買わせて、永久に乗換させれば債務は消えたも同じ、というウソを繰り返してきましたが、シムズ氏に言わせれば、それはよくないということなのです。
日銀の損失を政府が埋めることになると、独立性を否定する議論が出かねないという意味に読めます。
リフレ系は「日銀の独立性なんぞ剥奪してしまえ」と軽薄に叫んでいますから、何とも思わないのかもしれませんが、政治家や官僚が金融政策まで取り仕切るのは非常に危ないことだろうと思います。

*1:この程度のインフレ率ならスタグフレーションにはならないだろうと期待されるという意味ですが。絶対そうなるかどうかは分かりません。経験則。