「緊縮財政」と景気はあまり関係ない(日本は緊縮財政ではない)

財政推しの人たちの手法がどんどん悪くなっています。
事実に根ざさない主張を大勢で反復する、発信力にまかせて広める、といったやり方をするようになっています。
財政推しの人びとは、「緊縮財政を行うと経済成長しない」とか「日本は緊縮財政である」といった、現実遊離した主張を社会に拡散していて有害だと思われますので、データに基づいて否定しておかなければならないと思います。

政収支のGDP比ランキング

189カ国中、日本は141位。
ecodb.net
日本は緊縮財政どころか、放漫財政というべきでしょう。
ランキングを見るとわかりますが、日本の下には先進国はありません。
先進国中で最悪の放漫財政をしているのが日本。

ギリス

イギリスの財政収支のGDP比ランキングは130位。
イギリスについても「緊縮財政だ」とか述べる人がいますが、どの辺が緊縮なんでしょうか。
また、「イギリスは緊縮財政によって景気が悪くなった」という人もいますので、データを見てみましょう。
出典元は「世界経済のネタ帳」です。
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リーマンショック後イギリスは、-10%ほどの財政赤字を出していましたが、現在は-4%ほど。変化としては確かに「緊縮財政」ですが、名目GDP成長率はどうなっているのでしょうか?
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おやおや?
順調ではありませんか?
右肩上がりを維持していますね。

メリカ

アメリカの財政収支のGDP比ランキングは115位。
「アメリカは積極財政をしている」などと言う人がいますが、日本よりもよほど健全財政ですね。
リーマンショック後、アメリカは-13%ほどの財政赤字でしたが、現在は-4%ほど。変化としてはかなり強烈な「緊縮財政」。
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アメリカの名目GDP推移。
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右肩上がり。

ーストラリア

オーストラリアの財政収支のGDP比ランキングは、86位。
リーマンショック後、-4.5%ほどの財政赤字でしたが、現在は-2.7%ほど。変化としては「緊縮財政」。
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名目GDPの推移。
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オーストラリアに至っては、リーマンショックにもほとんど影響受けず。

ナダ

カナダの財政収支のGDP比ランキングは61位。
リーマンショック後、-3.9%ほどの財政赤字でしたが、現在は-1.7%くらい。変化としては「緊縮財政」。
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名目GDP。
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右肩上がり。

この国はリーマンショック後、-10%ほどの財政赤字。現在は-5%ほど。これまで挙げてきたどの国よりも、水準としては弱い「緊縮財政」です。
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某国の名目GDP推移。
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おやおや?
ここで初めて名目GDP推移が右肩上がりでなくなりました。
おかしいですね、どこよりも弱い「緊縮財政」であるはずなのに、この国はどうして名目GDP成長が停滞しているのでしょうか?
この国はデフレだったのですが、デフレ下では、たとえ変化だけでも「緊縮財政」ではいけないということなのでしょうか?
しかし、アメリカもまた2009年には物価上昇率がマイナスだったのですが、2010年には早くも「緊縮財政」をはじめています。にも関わらず、名目GDPは回復していました。
スイスに至っては今もデフレですが、財政収支のGDP比は-1.5%程度でしかなく、しかも名目GDPはゆるく右肩上がり。
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某国の名目GDP成長率が停滞している理由として「緊縮財政」を挙げることは、データを参照している限り、とてもできることではありません。
日本で財政推しをしている人びとが、単に自分の考えを述べているだけで何の根拠もとっていないことが確認できたかと思います。
また、どの国の名目GDP推移も、財政収支の変化には影響を受けていないことにも注目したいところです。
さて、これはまだ仮に考えているだけなのですが、政府支出が多いと、或いは予算を膨張させるとむしろ経済を停滞させるのではないか、という疑いも持つようになりました。
データを並べただけでは因果も相関も存在するかどうか分からない、というのはそのとおり。
しかし、「緊縮財政をしても景気には影響が出ない。放漫財政をしていても景気は良くならない」という傾向がこれだけデータで出てきているのに、まったく無視するのは、その方が不自然だろうと思います。


・・・ところで、「某国」ってどこなんでしたっけ?