財政で景気が良くなる訳がない。

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ールドカーブコントロールの失敗

「アメリカが利上げ志向なのに円安が進まない理由が分からない」と上念がとぼけている動画がチャンネルくららに上がっていましたが、理由は簡単で、上念らリフレ派が訳も分からず無責任に勧めたイールドカーブコントロールが失敗しているからです。
この間、日銀も公式に認めていましたが、イールドカーブコントロールを導入して以来、年間の国債買取額が10兆円以上減少しているとのこと。
イールドカーブコントロールは、金利を上げることも下げることも出来なくする仕組みなので、金融引き締めになることは常識があれば誰でもわかることなのですが、専門家づらしているリフレ派にだけは分からず、ああいう馬鹿げた仕組みをやすやすと導入し、名目成長率もマイナスという惨状を招いています。
明らかにリフレ派の失敗が原因でデフレ脱却が停滞しているのですが、失敗は常に人のせいにしなければ気が済まないリフレ派は、「財政が足りないからだ」と主張するようになりました。
彼らは基本的なリテラシー能力にすら欠けているので、プライマリーバランスが先進国中最悪の日本が「緊縮財政」なのだそうです。
こんな調子だから、「プライマリーバランスは無視して、政府債務とGDPの比だけ見れば良い」などという、小4レベルの分数すら理解しないバカ発言が平然とできるのであります。

論はいいから現実を見るべし

自分たちの失敗を財政のせいにして誤魔化すリフレ派の常套手段は、専門用語らしきものを乱用して、いかにも経済学に詳しそうな外観を作り出して周囲を威圧するというものですが、リフレ派の誤りは理論なんぞ知らなくても現実を見れば簡単にわかります。
財政政策を推奨する学者は国内外に多いですが、成功している学者ほどポジショントークをするので、どれだけ有名な学者であっても現実に全くそぐわないウソを平気で言うのが、残念ながら経済学界の実情です。
財政政策が効かない、或いは要らないという証拠は、誰でも簡単に得られます。
現在の欧米諸国は日本よりもはるかに調子よく回復しており、あのユーロ圏ですらインフレ率はプラスにあるわけですが、欧米諸国はそろいもそろって緊縮財政を実施しています。
先にも書いた通り、日本は先進国中最悪のプライマリーバランス、つまり先進国中最大の財政出動を行い続けているわけですが、名目成長率はマイナスに陥っています。
理屈は幾らでも捏ねることができますが、現実を見れば一目瞭然、財政が景気に効かないのは明らかであります。

政が効くなら増税は有益

財政が景気に効くなどとウソを言う人たちは、「増税のような緊縮財政は有害で、財政出動は有益」と主張していますが、これは矛盾した物言いです。
例えば、2兆円増税した政府が、その2兆円の地中に埋めてしまうなら景気が悪くなるのは当然ですが、現実にはその2兆円は何等かの形で支出されます。
2兆円増税して仮に景気に有害だとしても、すぐに2兆円は支出されるのですから、それによって景気が回復するはずです。
2兆円とって2兆円出るのですから、景気が悪くなるわけがないでしょう。
しかし、現実には消費増税すると、支出が同額増えるにも関わらず景気が大幅に悪化するわけですから、財政支出が景気を好転させないのは明らかなのです。

債発行による財政支出なら有効?

積極財政主義者は、「増税で可処分所得を奪うから景気が悪くなる。国債発行で人々の可処分所得を奪わずに支出を増やせば景気が良くなる」と言います。
そして、「金融緩和でマンデルフレミング効果を抑えて、国債発行による支出増加で景気は良くなる」と言い張っています。
2013年以降の現実をまず眺めると、大規模金融緩和と財政出動の組み合わせを当初から実行していますが、その効果が如実に現れたことはありません。
今年の予算も景気に配慮して増額されていますが、先にも書いた通り、名目成長率はマイナスに陥っています。
この点でもやはり、現実を見れば一目瞭然、財政出動は金融緩和をしていようがいまいが、効果が出ないのであります。
ただ、もう少し理屈っぽく考えてみましょう。
国債発行で可処分所得を奪わずに支出を増加させているのに、どうして景気が良くならないのか?
それは、リフレ派やケインズ主義者は消費に注目しすぎているからです。
ケインズ主義では、景気の動向を左右するのは投資だと教えているので、この点で消費にしか注目しないのは不思議なのですが、国債発行をすると人々の可処分所得は減りませんが、投資用に融資されるべき資金は事実上、減ってしまいます。
マネタリーベースは腐るほどありますが、金融機関が「貸し出すより国債を買う方が楽で確実だ」と考えてしまえば、投資用に融資が回りにくくなります。
となれば、金融緩和の効果を強く発揮させるためには国債発行を減らすべきなのです。
実際、小泉政権期の量的緩和は30兆円ほどの僅かなものだったのにも関わらず、強い円安と株高で景気の回復を実現しました。
小泉政権国債発行を減らしていたからです。
金融機関は、国債を買うことができない故、株式や外国資産など、国債以外の資産を買ったのだと推測されます。
結論を言えば、景気を順調に回復させるためには金融緩和と緊縮財政による国債発行減が必要だということになります。
これは小泉期の日本、現在の欧米諸国などにまさに当てはまります。

無利子永久債でも利払いは消えない

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タイトルを見て、「は?何言ってんの?」と思う人が多いと思いますが、真摯に考えているとむしろ当たり前の話であることがわかります。
リフレ派の常套手段は、「苦しい義務から逃げられる、嫌な現実を消せる」とぶちあげて、政治家や一般人の関心を教祖的に買うというものですが、悪徳商法の手口ですね。
政府債務の負担、利払いの負担は結局は形を変えてつきまとい、きちんと処理するまでずっと続き、先延ばしにすればするほど事態は悪化します。
人生の他の物事と同じ。
私も気を付けないと・・・

利払いは形を変える

高橋洋一・上念司・松尾匡スティグリッツ、といった人々は、政府債務を無利子永久債にして日銀に買わせて、そのまま保持させれば債務は事実上消える、と主張しています。
これによって政府の財政負担は軽減すると。
しかしこれは、政治家に取り入るため、世間の人々からの支持を取り付けるためのウソです。
日銀に資産を買わせると、準備金の形でマネタリーベースが増えます。
450兆円の永久債を買わせれば、450兆円の準備金が増えます。
個人的には、そんなことができるなら素直に償還すれば良いと思うのですが、リフレ派やスティグリッツが永久債にしたがる合理的な理由はおそらくないので、考えるだけ無駄でしょう。
とにかく、巨大な永久債の引き当てに巨大なマネタリーベースが保持されます。
金融緩和状態は景気を回復させ、インフレ率をいずれ上げていくので、利子率も上がっていきます。
巨大なマネタリーベースをそのままにしておくと、インフレ率が急速に高進するため、利上げを行う必要があります。
利上げはふつう売りオペで行われますが、永久債にしてしまうと売りオペができません。
金融政策を非合理に拘束する愚策ですが、リフレ派とスティグリッツは非合理的なので、そのような理性的な批判は通用しません。
売りオペができない状態で利上げするには、超過準備への付利を上げることで可能です。
すでに法定準備率は満たしているので、450兆円の大半が超過準備となり、付利されることになります。
現在の付利は0.1%でしかありませんが、2%インフレ目標が達成されている状態では、利子率もそれ以上にしなければ、インフレ高進を止めることができません。
おそらく2.5~3%の付利となるでしょう。
計算してみると、年間13.5兆円の利払いを日銀が負うことになります。
日銀の平成28年の決算を見ると、経常利益が1兆円、国庫納付金が4800億円という規模。


年間13.5兆円の利払い・・・
景気が良くなった状態では、日銀の収入も大幅に増えているでしょうが、インフレ率に同調して上昇している利払いを賄うのは無理でしょう。
ふつうの企業なら実質生産の増加分で賄えるでしょうが。
足りない分は政府から資本注入されるしかありません。
もちろん、日銀が潰れるとか破産するとかいう事態はあり得ません。
政府から注入される貨幣はもともと日銀が発行したものなのですから、潰れるわけがないのです。
ただ、政府が貨幣を日銀に注入するには、税で集めなければなりません。
景気が良くなった状態で国債によって貨幣を集めたら、いま問題にしている債務問題をさらに悪化させるだけなので、税で集める以外の手段はありません。
税で貨幣を集め、日銀に注入し、超過準備の利払いに充て、利上げする。
それをやらないとインフレが高進する。
つまり、政府は実質的な利払いから逃れられませんし、それは一般国民が負担するしかないのです。
シムズ氏が教えてくれたように、「インフレはある種の税」なのです。
政府債務の問題から逃れようとしても、形を変えて必ずつきまといますし、そうしないと経済秩序がそれこそ破綻してしまいます。


で、私は思うのですが、どうしてこんなまどろっこしいことをしなければならないのでしょう。
債務問題の、基本的で常識的な解決法は、誰もが分かるとおり、「返す」ということです。
債務を返せば、利払い費はどんどん減っていきます。あ・た・り・ま・え、ですが。
問題は、緊縮財政をすると景気が悪くなるかどうかですが、悪くなりません
現在の欧米の様子を見てみましょう。
緊縮財政と金融緩和でマクロ経済の状態は、日本よりもむしろ好転しています。
放漫財政の日本だけが先進国中、名目成長率マイナスの恥さらし状態です。
現実を見ましょう。
金融緩和と緊縮財政によって、我々は景気回復と財政危機の克服の両方を達成できます。

貨幣の債務性、中央銀行の破産?

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以前はデフレ派の問題発言を微力ながら批判していたのですが、今はリフレ派の問題発言を批判しなければならなくなりました。
「ならなくなった」というか、個人的にせずにはいられないということなんですけれども。
直近の問題発言は3つ。

  • マネタリーベースの「根雪」を永久債にせよ(松尾匡

この中で政策的な問題をもっとも含むのは1.
かなり含むのは2.
アホ発言でネタとして考察するのが面白いのは3.
1について、松尾匡氏は、永久債にしてもよいマネタリーベースの額を明らかにするべきでしょう。額が明らかにならないと政策になりませんし、批判する側も具体的な批判ができません。
今の名目GDPは橋本政権期や小泉政権期と大差ないので、順調な経済で必要とするマネタリーベースが、政府債務を軽減するほど多額になるはずがないので、松尾氏の意見について私は非常に懐疑的です。

日銀券に債務性がない?


高橋洋一という人は強気なのか弱気なのか分からない人で、そういう人間くささが周囲に気に入られる理由なのかもしれませんが、いい加減な発言が多すぎ、政策に悪影響を与えるので批判が必要です。
高橋洋一を批判する人は、単にインチキだとかバカだとか言うのではなくて、根拠をとってまともに批判するべきでしょう。
そうでないと悪口合戦で「どっちもどっち」とみなされてしまいます。
上記ツイートで驚いたのは、「日銀券は無償還」という部分。
日銀券の債務性については学者の間でも意見が分かれますが、償還がないという意見はちょっと想定外。
なぜなら、普段リフレ派は、日銀の買いオペレーションをやれやれと煽っているからで、オペレーションをするということは、資産と貨幣の交換をするということであり、売りオペをやったら貨幣は償還されるからです。
そんなのは、さすがのリフレ派でも前提にしていると思い込んでいたので、「貨幣は無償還」などと言われると、「リフレ派は自分たちの発言をどう理解しているのだろう」と私の方が混乱してしまいました。
貨幣を発行したり償還したりするのが金融政策なので、「日銀券は無償還」なら金融政策ができません。
この奇妙な発言は実は故あることで、高橋洋一は日銀券と政府紙幣を混同しています。
無利子無償還なのは政府紙幣で、おそらく政府紙幣論者の主張をさっと読んで、貨幣一般に当てはまると思っているのでしょう。(その政府紙幣論者はおそらくスティグリッツでしょう)
日銀券を政府紙幣と混同している主張が危ないのは、それが永久巨大マネタリーベース政策につながるからです。
安倍政権は知り合いのリフレ派の主張を信じこんで、あまり検討もしないで実行に移してしまうので、高橋洋一・上念司・松尾匡スティグリッツなどが主張している永久巨大マネタリーベース政策を日銀に強制する可能性があります。
この話題に関心のない人、それは世間のほとんどの人ですが、そういう人達は、「なんでそのくらいのことに目くじら立てるんだよ」と鼻くそほじりながらバカにしているわけですが、現在の名目GDPは橋本政権期とほとんど同じでありながら、マネタリーベースの額は450兆と55兆の違いがあると書いたら、少しは驚いてもらえるのでしょうか。
現在の巨大マネタリーベースを永久債化するという案がどれほど危ない発想であるか、想像してほしいものです。

ハイパーインフレで日銀破産?

次はネタというか面白思考実験。
www.youtube.com
上念は本当にバカなことしか言わなくなったな、と思うのですが、この動画では「日銀が破産するとしたらハイパーインフレくらい」と発言していて、意味が分からずにきょとんとしてしまいました。
日銀が破産するという人は他にもいますが、ふつうそれは譬えで言っているだけで、日銀が破産するという事態は考えられないし、不可能でしょう。
どうやって破産するのか見当もつきません。
ハイパーインフレで、紙幣を印刷するための紙やインクが払底したときでしょうか?
ジンバブエではそれに似たことがあったとかなかったとかいう話を見たことがありますが、日本でインフレ高進が起こっても紙やインクが足りなくなることはまずないでしょうし、電子マネーならそれこそ無限に発行できるので、破産できないと思うんですけど。
日銀が債務超過になったときに政府が資本注入するという規定が今もあるのかどうか確かめていないのですが、どうでもいいですよね、それ。
政府が形式上、日銀に資本注入するとしても、その貨幣は日銀が発行したものですよ?
やるとしても形式を整えるだけで、無意味な行為です。
これを読んでいる貴方がミダス王の子孫で、貨幣をいくらでも虚空から生み出せる存在だとしたら、破産できるのでしょうか?
そもそも日銀は営利企業ではないので、破産させること自体、意味不明です。
なんで破産させるのでしょう?
民間企業なら破産の規定がなければ経済秩序が乱れかねませんが、日銀は貨幣を発行しているだけで、その貨幣を財やサービスと交換しているわけではありませんから。
日銀が債務超過に陥って問題になるのは貨幣価値ですが、日銀の保有資産がまったくなくなるようなところにまで至るわけではないので、多少貨幣が出すぎても回収は可能であって、今話題になっている20兆円程度の貨幣なんてすぐ回収できますから、まったく問題になりません。
これは政府でも同じような面白思考実験ができるのですが、政府だってハイパーインフレで破産したりしません。
そもそも政府は営利企業ではなく、政治を統括する機関にすぎないのですから、政府が破綻するとしたら政治的な破綻でしかなく、経済関係で破綻することはあり得ません。
政府が経済関係で破綻するという考えのおかしさは、「豪族が経済破綻する」「戦国大名が経済破綻する」「武装勢力が経済破綻する」「十字軍が経済破綻する」という様子を想像してみたらわかります。
そんなことはあり得ませんね?
それらは政府の原型のような存在ですが、経済取引をするために存在しているわけではありません。
政府の収入は経済取引ではなく税金であり、それは強制徴収されるものです。
戦国大名の収入も経済取引から発生しているわけではなく、支配領域から強制徴収しているだけです。
経済破綻するという事態は基本的にあり得ず、食料が全くなくなって餓死するくらいの事態しか考えられません。
しかし十字軍に至っては攻め込んだ地域で敵を食ったと言われているので、餓死で経済破綻することすら難しい。
源平の争乱も養和の飢饉のさなかに行われたわけで、経済危機が発生していても政府や政府の原型になっているような存在はほとんど影響を受けません。
経済関係で危機に陥るのは一般人だけです。