読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

上念司氏にFTPLの解説は無理である。

f:id:maddercloud:20161224132859j:plain
チャンネルくららの動画を見ると、上念司氏は「八重洲イブニングラボ」でFTPLの解説を行うのだそうです。
安達誠司氏によるFTPLの解説を元に、四則演算だけを用いて説明するのだとか。

まず問題なのは、安達誠司氏本人は「シムズ氏の論文を読んでもFTPLがよくわからなかった」と発言しているので、それを元にしても説明することはできないだろうということ。

次に、四則演算だけだから易しいとは言えないこと。
概念を理解したり、その概念の正当性やら妥当性を判定するのはやっぱり難しいでしょう。
四則演算だけで書かれた1000ページ以上ある初歩的なミクロ経済の教科書がありますが、あれを読み通している人はあまりいないんじゃないでしょうか。
大学で教科書として用いているなら読み通すと思いますが、自発的に読んでいる人はあまりいないと思います。
四則演算だけで説明されていても、メカニズムの理解は苦労するということだと思います。

四則演算だけの教科書だけでなく、初級のミクロ教科書がいくつも出ていますが、自発的に読む人はほとんどいないと思いますね。
一般の人だけでなく、ジャーナリスト・評論家・政治家・コメンテーターなど、政策を決めたり政策に影響を与えたりする立場の人で、ミクロ経済学の素養のある人をほとんど見かけません。

恐ろしいことに、大学で政策や経済学を教えているという人たちでもそんな感じ。
なかには、経済学者を自称していても初級ミクロ経済学の素養がない人がいますし、そういう人が政治家と個人的なツテを持っていて、政策に影響を与えています。

そんな状態ですから、現在の日本が世界最大の金融緩和と先進国中最大の財政出動をしていながら経済停滞をしているのも当然のことであります。

FTPLの説明に無謀にもチャレンジする上念氏

上念氏がFTPLをちゃんと理解していないのはほぼ確実ですし、それどころか本職の経済学者である浜田氏も怪しいものです。

物事は軽薄に賛成反対言う前に自分で調べるのが大切だと思うのですが、FTPLについてちょっと調べてみれば、専門家の間でも評価がまったく分かれていて、複雑な数学部分以前に、基礎になっている概念に疑問を呈されていたりするものです。

この理論は実証されておらず、正しいのかどうか良くわからないというべきものであり、本来なら軽々しく否定も肯定もできません。

政策に取り入れて悪いとは言えませんが、それは大冒険ですね。
インフレ目標など比較にならないほどの大冒険です。
何しろ、本格的に採用されたことがなく、どんな結果が出るのか全く分からないですし、何年か十数年かやってみて、誤りであったことが判明すると政府債務の問題が取り返しのつかない状態になります。
そんなものに国民全員を巻き込んで良いものでしょうか?

昨日の動画を見る限り、上念氏はすでにFTPLについての我田引水を行っています。
八重洲イブニングラボで行う「解説」はおそらく、「FTPLはリフレ政策と同じようなものであり、我々の従来の主張と整合する」といったものになるでしょう。

そんな「解説」をしたらウソなのですが、そんなことで有料講座を行って良いものなんでしょうか。

上念氏が公開された場所では「解説」を行わず、ファンだけがあつまる閉鎖空間で「解説」をしようとしているのは、FTPLについての理解に自信がなく、しかも正確な解説をするつもりが最初から無いからだろうと思います。

八重洲イブニングラボでの「解説」は支持者の結束を固める集会に過ぎないでしょう。

念氏のFTPL説明のおかしさ

上念氏は、「FTPLは金融緩和をビルトインした理論だ」と昨日の説明で述べていましたが、これは誤りです。

FTPLは通貨供給量と物価の関係を否定しており、だからこそ「物価水準の財政理論」なのです。
この理論では、国債の日銀引き受けや国債の買いオペは物価変動に何も影響を与えないと主張しています

また、「政府債務の残高に対して、財政が破たんしないように物価が変動する」*1ともFTPLでは主張されているのですから、デフレの原因は日銀ではなく政府の財政運営にあった、ということになります。

まさにリフレ政策の全否定であります。

だからこそ浜田氏がFTPLを支持するようになったことは変節なのであり、変節という以外に表現のしようがないのです。
この件についてはマスコミの批判が正しいと言えます。

通貨供給量が物価に影響するならそれは貨幣数量説になってしまいます。
浜田氏は貨幣数量説に根差すリフレ政策は誤りであったと述べるに至っているのですから、上念氏の説明は最初の一言めから間違っていることになります。

さらにFTPLでは、「追加で政府債務を発行する時点で物価は下落し、償還の時点で物価は上昇する」としていますから、「債務を償還するな」と主張してきた高橋洋一氏や上念氏の従来の主張と全く矛盾します

田氏がFTPLを持ち出す無意味さ

浜田宏一氏がFTPLを支持するに至った理由は、「(長期)金利が0に近づいて量的緩和の効果が薄れたから」というものでした。
この言説自体が曖昧なもので、1を下回ったらダメなのか、0.5を下回ったらダメなのか、或いは0ギリギリになったらダメなのか、はっきりしません。この辺の説明をちゃんとできるのでしょうかね。

「効果が薄まった」という点も曖昧で、学者の言説とは思えません。
何が薄れたのでしょうか?インフレ率でしょうか?
浜田氏は、「インフレ率の上昇は本質的でない。雇用と生産の増加が大切」と述べており、現状の日本は少しずつ生産と雇用が増えているのですから、主張がやはり最初から矛盾しています。
思考が混乱しているのではありませんか?

現行の、マネタリーベースを中間目標としたインフレ目標付き・国債無限買い入れ、の他にFTPLに根差した政策を行え、と浜田氏は述べているわけですが、マネタリーベースは広義の政府債務なのですから、公債残高を増やす必要はないはずなのですが。

上念氏は確か、「浜田先生を批判している人間は、この議論が統合政府を前提としていることを理解していない」という主旨のことを述べていましたが、統合政府を前提に考えると、公債残高を増やす必要はなく、マネタリーベースを増やせばよいということになり、FTPLに根差した政策を追加で行う理由が無いということが分かります。

以上、上念司氏がFTPLを理解しておらず、その「解説」など無理だ、ということを書いてみました。

上念氏が今後、どれほどムチャクチャなことを「解説」として世間にばら撒くのか、注視していきたいと思います。

*1:ついでに言うと、高橋洋一氏と上念司氏は、「日本は財政破綻しない」と言うのですから、FTPLによってしまうと物価が上昇しません。