ユーロ圏の回復・緊縮財政・マイナス金利

「強烈な緊縮財政」をしているユーロ圏が継続的に回復しています。

ユーロ圏GDPは0・6%増 1~3月期、伸び拡大 2016/4/29 20:07 共同通信
 【ブリュッセル共同】欧州連合(EU)統計局が29日発表したユーロ圏19カ国の1~3月期の実質域内総生産(GDP、季節調整済み)暫定速報値は、前期比0・6%増だった。伸び率は昨年10~12月期の0・3%増から拡大。0・4%増とした市場予想を上回った。
this.kiji.is

年率換算で2.4%の拡大ですかね。四半期GDPは参考でしかなく、GDP統計は年率の発表を見て評価するべきなのですけれども、日本では四半期GDPをとても重視する人が多く、四半期GDPが低下すると「緊縮財政のせいだ」と即座に判定されるわけですが、ユーロ圏の継続的回復に対してはダンマリを決め込まれているようです。
ところで、ユーロ圏の緊縮の強さがどれくらいなのか、ということが調べにくかったのでやってこなかったのですが、今回手間暇かけて検索してみたら、ようやく見つけることができました。
この資料の68ページに、2009年当時のユーロ圏の財政収支のGDP比が載っています。
2009年にユーロ圏は-6.4%の財政赤字
これが現在では・・・

15年のユーロ圏財政赤字が低下、スペイン・ポルトガルは目標未達
[21日 ロイター] - 欧州連合(EU)統計局は21日発表したデータによると、2015年のユーロ圏の財政赤字は対域内総生産(GDP)比2.1%と前年の2.6%から低下した。スペインとポルトガルは財政健全化目標を達成できなかった。
jp.reuters.com

-2.1%にまで財政赤字が好転。
おや?
このエントリを書くときにアメリカの財政赤字について調べたのですが、アメリカは2009年から現在に至るまでに、10%ちかく緊縮財政をしています。
アメリカの財政収支はGDP比で現在、-4%くらいですから、水準でみると確かにユーロ圏よりは緊縮度が低いですが、変化でみるとアメリカの方がユーロ圏よりも遥かにきつい緊縮財政をしていることが分かりました。
うーん。
これだけ急激な緊縮財政をしたアメリカが、どうしてユーロ圏よりも経済が遥かに好調なのでしょうか?

融政策の効き具合

2015年のユーロ圏実質GDP成長率は1.6%で、日本の0.5%よりも変化だけでみると、良い数字になっています。(日本で金融緩和をはじめて1年経った2013年の実質GDP成長率は1.3%ほどでした。)
ユーロ圏は金融緩和をはじめて、たかだか1年ほどで成長を再開したことになります。

イナス金利

ユーロ圏の金融緩和の規模は月額7.5兆円くらいでした。2016年3月の追加緩和でもっと増やしましたが、この規模は日本と大差ありません。
ユーロ圏の経済規模は日本の3倍ありますから、個人的に「ユーロ圏の緩和規模は大したことない」と考え、弱い効果しかないと思っていました。
しかし、1年経ってみると、どうも日本よりも金融政策の効き目が良いように思われます。
マネーサプライ(M3)の伸び率が5%くらいになっています。日本は過去最高の出来でも3.4%ですからね。
日本はGDP比でユーロ圏よりも遥かに巨大な金融緩和をしていますが、マネーサプライの増加率といい、GDPの成長率といい、ユーロ圏に負けています。
この点で、単に金融緩和量を増やせばよいとか、増やさなくてはならない、という意見に疑問符が付きます。
特に、緩和量が多くないとマイナス金利には効果がない、という意見は、ユーロ圏の状態をみるにつけ全然説得力を持っていません。
ECBの方が、社会へのマネーの流し方が上手いように思います。
日銀もECBが行っている手法を真似てみてはどうでしょうか。同じようなことをしているんでしょうかね。
そんな中でもやはり、マイナス金利の扱いの差が気になります。
ユーロ圏のマイナス金利は効果が無かったとか、逆に緊縮的に作用するとか言う人がいますが、事実を全然参照していない意見ですね。
ユーロ圏のマイナス金利は0.3%で、追加緩和で0.4%に拡大したわけですが、早いうちからマイナス金利を導入していたことで良い影響があるようにも見えます。少なくとも緊縮的な作用は見られません。
マイナス金利唱道者からリフレ政策が批判されているせいか、在野リフレ派の中には漫然とマイナス金利の悪口を言う人が何人かいますが、そういうのはみっともないです。
理論的に反論してほしいものです。