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土建覚書

第7回|建設生産システムの雇用関係|しんこうWeb

社会保険の加入を徹底して雇用関係を明確にすることは、若者の建設業への入職を促がす効果も期待される。しかし、雇用に係る事業主負担分は、社会保険料労務管理費だけで賃金に対して23%であり※2、これらを工事費見積りに含める必要があることへの理解を拡げなければならない。法定福利費の賃金水準への反映を徹底すべく、平成25年度公共工事設計労務単価の大幅な引き上げ(全国15.1%、東日本大震災被災地21.0%)が実施された。さらに、この2月からは、全国平均で7.1%の引上げが行われており、平成24年度比で23%という大幅な引上げとなる。
 国土交通省では、設計労務単価の大幅引上げによって、技能労働者の賃金水準の引上げ及び社会保険加入の徹底が図られるように関係建設業団体、公共発注者、民間発注者に要請し、建設業団体では、会員企業に対して自社及び下請企業に適切な賃金水準の確保、社会保険加入促進などの要請を行っている。前号で触れたが2013年9月には、行政、発注者、建設業団体、建設労働組合が標準内訳書の活用による未加入対策の徹底を申し合わせた。公共工事、民間工事を問わず、関係者が契約時及び代金支払い時に内訳書に記載された福利厚生費を確認することで適正な賃金、福利厚生費が支払われることを期待したい。
 賃金水準是正のもう一つの動きが公契約条例の制定である。地方公共団体が契約する事業において支払われる賃金の最低水準を当該公共団体が決めようとするもので、2009年の野田市以降条例制定団体が増加しつつある。現在、川崎市、多摩市、相模原市国分寺市、渋谷区、厚木市、足立区(本年4月1日施行)を加えて8公共団体が最低賃金水準を含む公契約条例を施行している。

住宅業界と土木業界に見出した共通課題|日経BP社 ケンプラッツ

笹子トンネルの事故以降は、直接関係がない取材の際にも、事故のことが時々話題になる。ある中堅建設会社の社員の「ストックの維持管理や改修が大事だと分かってはいるのだが、手間が掛かるし利益率が低くてねえ」というつぶやきに、「アリャ、このセリフ聞き覚えがあるぞ」と思った。日経ホームビルダーの取材でも、似たようなことを言う工務店社長や住宅会社社員がいたのだ。十分なメンテナンスを受けずに放置されているストックが少なくないのは、発注者の財政事情などのほかに、業界側の取り組みにいまひとつ積極性が欠けているせいもあるのではないかと思う。

PFI法改正、脱・請負のときが来た|日経BP社 ケンプラッツ

さて、改正案が施行されると、建設会社や設計事務所には、どのような資質が求められるのだろうか。当然のことながら、事業性を見抜く力と、実施後の運営力が大切になる。不動産事業を考えれば分かりやすい。基本となるのは収入と費用だ。

 収入を算出するには、利用者数や利用回数、料金を見積もらなければならない。一定の事業期間のなかで、「利用者数×料金」が最大となるような設定が重要だ。料金が高すぎれば利用者は現れず、安過ぎれば採算が厳しくなる。収益性を保つには、利用者のニーズをしっかりと把握しなければならない。ニーズに影響を及ぼす社会や環境の変化も予測する必要がある。人口、競合施設の動向、気候の影響などを調べなければならない。

 費用についても同様だ。施設の維持や運営にいくらかかるのかを正確に把握しなければ、収支計画が狂う。災害リスクも加味すべきだろう。利用者の安全を確保しながら、費用を抑えることが求められる。ある程度の快適性も必要だ。サービスが低下すれば、利用者が減って収入も減る。

 従来のような公共工事の設計受託や工事受注ならば、予測が外れても決められた報酬を得ることができた。ところが独立採算型のPFI事業では、収入を過大評価したり費用を過小評価したりすると、事業の存続自体が危うくなる。

 独立採算型のPFIは、請負で成り立ってきた会社にはハードルの高い仕事だ。半面、創意工夫とチャレンジ精神に富む会社にはチャンスをもたらす。

 身近なところでは、公共の所有する土地や施設の活用があるだろう。収益を生み出す器とする提案力を備えれば、得意の設計や施工の技を生かせる。事業運営や資金調達が苦手なら、不動産会社や金融機関、商社などと連携する手もある。「考える人」や「交渉できる人」の存在感が間違いなく増してくる。

「建設就業者100万人減」の時代とは|日経BP社 ケンプラッツ

(財)建設経済研究所が10月30日のセミナー「日本経済と公共投資」で発表した予測によれば、2010年度の名目建設投資は41兆600億円に、名目政府建設投資は15兆5000億円にまで落ち込むという。22日に公表した推計値を、2010年度の概算要求額を踏まえて下方修正した。

 実質投資額の修正値は30日には発表されなかったが、2000年度を基準とした2010年度の実質建設投資は40兆円台に、実質政府建設投資は15兆円前後になりそうだ。この建設投資額は実に、1970年度の41兆6389億円を下回る。

 実質建設投資のピークは1990年度の約84兆円。70年から20年でピークを迎えた建設投資が、今度は逆に20年で70年当時の水準に戻ることになる。

 建設投資の減少は、雇用にも少なからず影響を与えるだろう。総務省が10月30日に公表した労働力調査(速報)では、建設業の就業者数は2009年9月時点で503万人。1年前と比べて20万人減った。

 1970年の建設業の就業者数は1年間の平均で 394万人であり、生産性などが同等と仮定するなら、これから100万人程度が減少する可能性がある。

 前原誠司国土交通相は日経コンストラクション10月23日号のインタビューで、「年間の完工高が100万円以上の会社は20万社程度」としたうえで、「20万社という建設会社数が果たして妥当かといえば、私は多いと思う」、「転業支援をどうやっていくかが今後の課題」と、建設会社の数の多さに言及している。

地方分権で公共事業はどうなる?|日経BP社 ケンプラッツ

新設から維持管理の時代に変わるなか、インフラを自治体単位で管理すると、かえって非効率になるとの意見も多い。

 「国交省と自治体の職員の技術力に、大差はないかもしれない。しかし、インフラの維持管理は、技術力に加えて経験も重要になる」と、国交省のある職員は話す。例えば、橋の定期点検を技術力の高い民間会社に任せても、点検結果を基に補修するのかどうかは自治体の職員が経験に基づいて判断しなければならない。

 「都道府県単位よりも地方整備局単位でインフラを広範囲に管理した方が、職員同士のノウハウを共有したり、蓄積したりしやすい」(先の国交省の職員)。複数の自治体が広域連合をつくり、インフラを共同で管理する方法もありそうだ。

 維持工事や補修工事では入札不調が相次いでいる。発注組織の規模が大きくなれば、発注単位を大きくしたり、入札方式を工夫したりすることで改善の余地が生まれる可能性もある。

 分権委は2009年5月ごろをめどに、税源移譲の方針などをまとめて勧告する計画だ。この勧告を受けて、地方分権の議論が本格的に始まる。

 地方分権にはメリットも多い。例えば、「国に陳情する必要がなくなり、公共事業に対する自治体の意思決定や実施のスピードが速まる」。分権委の委員でもある神奈川県開成町露木順一町長は、勧告をこう評価する。

 インフラをめぐる仕事と財源、職員の役割分担が、国と自治体でどのように変わるのか、しっかりと見極めたい。

「不景気だから公共事業を」で大丈夫?|日経BP社 ケンプラッツ

「これまでの公共事業は、人口増の発想だった」と三菱総合研究所地域経営研究本部の山田英二主席研究員は話す。例えば、道路を新しく造れば造るほど交通などの需要も増えて、地域を潤すといった発想だ。ところが、今後は人口が減る。「地域に新しい道路を造っても、建設費以上の投資効果をもたらしにくい」(山田主席研究員)。

 国際空港の整備など、日本が世界の中で成長するために必要な公共事業は欠かせないにしても、地域にお金を還流するためだけに公共事業を実施するのは、もはや限界だろう。投資効果の少ない後者の公共事業を続けていては、インフラ整備に充てる借金の返済や維持管理費の負担を後の世代に残すだけになる。

「必要な道路」より雇用不安の解消に軸足を|日経BP社 ケンプラッツ

例えば日経コンストラクションが2004年、公共事業に対するイメージを調査したところ、「公共事業が雇用対策などの福祉目的となっている面があり、そのため本当に必要な社会資本整備が進まない」(官公庁に勤める40歳代の男性)といった批判は珍しくなかった。

 もちろん、雇用のために必要性の低い公共事業を実施することなどは論外。例えばニーズはあるのに入札不調が相次ぐ除雪や日常の維持管理、道路の保全などの仕事を雇用対策の視点からとらえ直してみる。

 解雇や雇い止めなどの雇用調整ばかりが強調される昨今、「必要な道路」といった社会の納得感を得にくい議論よりも、雇用の受け皿としての建設産業の存在感を改めてアピールする方策を考えてはどうだろうか。

建設業界にも忍び寄る2011年問題の影|日経BP社 ケンプラッツ

2011年問題――。地上アナログ放送が停波し、地上デジタル放送に完全移行することに伴う問題が、2011年に生じるとして使われる言葉だ。最近、新聞やテレビでその言葉が目に付く。

 「建設業界に関係のない問題だ」と私は思っていたが、別の「2011年問題」が建設業界に起きる恐れがある。2007年問題による人材・技術不足を解消するために再就職した団塊世代が、2011年あたりに65歳になり、「第2の定年」を迎えるということだ。再び人材不足や技術消失に悩まされそうだ。

今も続く重層下請けが若者の現場離れを招く|日経BP社 ケンプラッツ
建設業務労働者就業機会確保事業の概要|厚生労働省
建設業における労働力需給調整システムの概要|厚生労働省
施工体制における法令違反の是正 リーフレットの作成 | 日本建設業連合会

・下請階層が増えるにつれ、手数料や経費が発生し、労務費へのしわ寄せを生み、雇用そのものが不安定になるなど、技能労働者の確保・育成を困難にしている。
・末端の技能労働者を把握、管理できないため、労働災害や建設生産物の品質低下を引き起こす恐れがある。
(1)重層下請構造の背景
・重層下請構造は、専門化・分業化の進展だけでなく、受注産業の特性として業務量の増減による受注環境に応じた経営の安全弁、あるいは工事費縮減を図るため、下位の階層へ外注化が進んだことがあげられる。
・その中で、末端の技能労働者をみると、主に一人親方や個人事業主の増加が重層下請をさらに深化させる一つの要因になっている。
(2)一人親方や個人事業主の増加の要因
・請負単価が低下することにより、社会保険料事業主負担等を支払うことが難しくなることや、技能労働者自身が一定の手取り額を確保するために社会保険への加入を拒むことから、企業が技能労働者を直接雇用せず、一人親方や個人事業主が増加する傾向がある。
社会保険加入を徹底することにより、これまで雇用されているものの社会保険は未加入となっていた技能労働者は、社会保険料について雇用先企業の事業主負担、あるいは技能労働者の個人負担の支払いを回避するために、従来にも増して一人親方や個人事業主の増加が懸念される。
※昨年、日建連会員企業を対象に実施したアンケートでは、18社/40社が一人親方は増加していると認識。
(3)派生する法令違反(偽装請負等)
・重層下請の一つの要因である、雇用から切り離された技能労働者は、形式上「請負」となっていても派遣先の現場において指揮命令を受ける場合は、「偽装請負」に該当し、労働者派遣法や職業安定法の違法な状態となる。
・また、建設業法上においても、重層下請構造に伴って、一括下請負の禁止、無許可業者への請負制限、主任技術者の配置義務などの法令を遵守できなくなる恐れがある。

この国を考える 建設業 下請取引 97.3%が建設業法に違反
第12回 元請・下請関係の欧米事情|しんこうWeb