『欧人』と『米人』を分けた方がいいね。

わたしたち日本人は一般に『欧米人』という言い方をしますが、もう開国して相当に経つのですから、区別した方が良いと思います。
特にこの頃の経済危機への対応で『欧人』と『米人』の差を目の当たりにしました。
二度の大戦のころに生きていれば、早期にその差を実感したのだろうとも思います。
世界大戦でも欧州人は自分たちで問題を解決できず、二度ともアメリカの介入によって危機を脱することが出来たわけで、欧州人はアメリカ人よりも我々日本人に似ています。
自分たちで危機を直視したり、乗り越えたり出来ないという点で。
アメリカ人は欧州の中でも自立的な傾向を持つ人々を中心として形成された似て非なる民族ですね。今更ですかね。
【社説】欧州の成長をめぐるまやかしの議論 - WSJ日本版 - jp.WSJ.com
この記事はEUやユーロの理念に共感するアメリカ人が書いたのでしょうけれども、ここに出てくる現実否認や論点ずらしは日本の政治家や日銀、御用「識者」にそっくりですね。コピーのようです。

1980年代、世界は70年代の停滞から脱する道は改革であると学んだ(とわれわれは思った)。この改革を通じ、民間投資やリスクテーク、労働力の流動性・柔軟性、価格統制の廃止、資本形成を促す税率の採用などが促進された。現在、世界銀行が提唱している「優れたビジネス環境」の推進である。今般の危機において、欧州はこうした政策を全く試していない。

こういった所謂「構造改革」は必要なものですが、短期的な経済成長とは関係ありません。
今の欧州は破綻が目の前まで迫っている状況なので、3年も5年もかかるような「改革」をしても役に立ちません。改革が奏功する前にクラッシュします。
欧州は今すぐ経済を好転させて、それを数年続けないと一息もつけないような状態なのですから、現実とのミスマッチが甚だしい見解です。

またシュレーダー政権とその後のメルケル連立政権は、連邦法人所得税を1998年の45%から15%に引き下げた。現在、州税を含めた実効税率は30%程度と、90年代の50%以上から大きく低下している。こうした改革がドイツの競争力を高め、投資や雇用を呼び込み、経済復活の基礎を築いた。同国の失業率は現在5.7%だ。

このような言い方には要注意です。日銀や御用「識者」が日本でもよく行なっている『断定型詭弁術』です。
「これがその理由だ。だから正しいのだ」という論法は素直に読んでしまうと書き手のロジックに巻き込まれて「納得」させられてしまう虞のあるもので、よく考えると根拠がない、原因と結果を逆にしている、という詭弁術です。
ドイツの経済が好調な理由は複数ある筈で、そのうち輸出が強いこともよく挙げられる要素です。

ドイツのショイブレ財務相は2010年、米国の政策についてこう語った。「彼らは既に果てしない量の資金を経済に注ぎ込んでいる」「結果は惨めなものだ」(2009年3月12日付の社説、"Old Europe Is Right on Stimulus"を参照して欲しい)

アメリカは確かによたよたした足取りですが、回復に向かっています。ドイツが緊縮を強要しているギリシャやスペインはどうなっていますか?
スペインが再度変調をきたし始めて「危機再燃」などと言われている現実が見えないようです。
戦争でも不利になると現実を否認する傾向が指導層にでるようになり、余計に間違った判断を下すようになるとのことですが、まさしくそれが起こっていますね。
日本もドイツも間違った信念にすがって滅亡しましたが、またも揃って同じ様な間違いを反復していますね。国民性です。

新たな問題や混乱を引き起こしかねないインフレを除けば、欧州が債務危機を脱する道は経済成長しかない。しかもそれは、税制や労働市場、規制、年金などの改革に後押しされた民間主導の成長でなければならない。

馬鹿だな、この人。
マイルドインフレにせずにどうやって経済成長するつもりなんですかね。
実質経済成長しても名目経済成長がなければ税収は上がりませんよ?
名目はインフレ率こみですよ?
EUやユーロの理念に固執して市民の生活や将来設計を破壊し続け、ヘタをしたら大クラッシュする危険性すらあるのに、しかも上手くいっていない証拠が山ほど眼の前にあるのに誤った判断を修正出来ないこの様子は、大日本帝国が国体護持に固執して多数の国民を無駄死にさせ、今にも続く社会の歪みを齎したことと非常な相似を見せています。
有りもしない理想を追いかけて自滅して、また結局はアメリカの世話になるのだろうと思います。